猫!猫!猫が出てくる春画を見よう【後編】

猫!猫!猫が出てくる春画を見よう【後編】

いきなり余談なんですが「猫」と言えば私娼、つまり公の営業許可を得ずに

春を売る女性のことを「猫」呼ぶことがあったようです。

 

大正10年10月20日発行の外骨氏の書籍『笑ふ女』によると

公娼(遊廓の屋敷等の公の営業許可を得ている場所で働く女性)「狐」に例えることが

あったのに対し私娼は時に「猫」と呼ばれたようです。

 

詳しい語源は不明ですが、もしかしたら猫の振る舞い等が当時の私娼たちと

似ていたのかもしれませんね。

 

では猫春画を見ていきましょう

 

 

最初は歌川国芳の《華古与美(はなごよみ)》よりご紹介です。

 

きれいな振袖を着る娘がシゲルという男性と親密に話しているようです。

 

娘「シゲルさん、アノおきさんはどうしたねえ」


シゲル「ええ、どうしたか、あのお多福の番はしねえから」


娘「チヤあんなことを。それでもお前がたいそう可愛いがっておあげじゃないか」


シゲル「なんの嘘だ、おいらの可愛いと思うのは、たった一人だ」


娘「チヤ、それはどこの娘だえ?」


シゲル「おめえ知らねえか。この色むすめヨ」


と、ぐっと引き寄せて手を入れかけると、


娘「アレ、モウ」


と小さな声、にっこりと、顔の笑窪(えくぼ)は一粒よりの箱入りむすめ。


ああ、この色男はあやかりものならずや。

 

身八つ口からチロリと見える娘の細い腕と、緋色の湯文字から見える太ももの細さが

娘の幼さを表現していますね。

シゲルの肩に垂れる袂(たもと)からも、ふたりの親密さがよく分かります。

 

娘のヤキモチや、シゲルが娘に注ぐ愛情の量がどれほどなのかはどうでも良いような

素振りの猫が二匹。

 

娘がシゲルに甘えて絡みつく様子と猫たちの様子が重なり合い、

おだやかな時間が流れていますね。

 

 

「わあ犬だ!」と時々言われるのですが、こちらの動物は猫(?)です。

 

歌川国芳《花結色陰吉(はなむすびいろのほどよし)》で描かれているこの絵には

恥ずかしそうに猫を見ている女性と、猫が一匹。

 

誰かがいたずらで猫に男根の被り物を被せたらしく、前が見えない猫がふらふら

歩いてきたようです。

猫は状況が掴めないのか、しっぽはまるで膨らんでいるようです。

 

火鉢にあたっていたら男根の被り物をした猫がふらふらと歩いてきたので

女性はびっくりしたようです。



オンナ「ヲホホホ、好かない猫だね。だれがこんな冗談みたいなことをしたのだろう。

まあ、こんな大きい男根が本当にあったらどうしよう」

 

どうやら男根の被り物を被った猫を見たことにより、

「こんな大きな男根を持つ人がほんとうにいたら」なんて想像してしまったようです。

 

シンプルながら浅黄色の背景と着物の配色が美しく絵全体が引き締まって見えますね。

 

私はこの絵を最初見たときにけっこう衝撃で、この絵をもっと多くの人に知って欲しいと思い

カードケースの絵に採用したりしています。

 

 

最後に猫狂いで有名な歌川国芳が描いた艶本《華古与見(はなごよみ)》の冒頭にも

猫ちゃんがいたのでご紹介します。

 

この艶本の見返しに「程芳画」(程芳は国芳のこと)と記されていますが、そこに押された

花押(かおう)が、なんとなのです。

 

花押とは署名の代わりに使用される記号のことです。

猫の絵の中に「好」の漢字が書かれ「猫が好き」ということを表現していますね。

 

猫を飼ったり愛でることは人間への癒し効果や健康を向上させる効果など様々な

メリットがあるらしく、国芳の活動の源はまさに猫だったのかもしれませんね。

 

 

 

いかがでしたか?

人々の日常に寄り添う猫ちゃんたちに少しは癒されたでしょうか。

 

人々の多くは人生において色事に心を寄せると月岡雪鼎の艶本で書かれていました。

 

日常に溶け込む人々の営みでわたしたちを癒してくれている猫ちゃんたちが、

より一層愛おしくなる猫春画でした。

 

 


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カンレン

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