
これは山口県の中学生、彩音さんの体験談だ。
岐阜にいとこが住んでおり、八月の夏休み中に遊びに出かけることを毎年楽しみにしていたそうだ。
それまでに不思議なことは特になかったが、二年前に、奇妙な出来事があったという。
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いとこは三人姉弟で、一番上の由希さんは二十歳、その下に十七歳と十五歳の弟がいた。
彩音さんは年上のお姉ちゃんお兄ちゃんと遊んでもらえることが楽しみだったという。
「彩音、久しぶり!元気にしてた?」
「元気だよ~、由希ちゃんたちも元気だった?」
全員で昼ごはんを食べた後のことだ。
特にすることがなく、話の流れで由希さんの弟たち二人を交えて
四人でかくれんぼをすることになった。
由希さんの家は一戸建てで、隠れる場所も多くあった。
「じゃーんけーんぽん!」
「じゃあ翔が鬼ね~」
鬼が弟の一人に決定して、彩音さんと由希さんは階段下の小さな物置部屋に入って隠れることにした。
物置部屋は二畳ほどの広さがあり、冬場のヒーターなど、その季節に使わないものなどが
置いてあった。
「二人で入ったらばれちゃうかな……」
彩音さんの心配をよそに、由希さんが物置部屋の中に引っ張った。
「大丈夫でしょ!早く早く」
電気をつけてしまうとすぐに見つかると思い、二人は暗闇の中で声を潜めて会話をしていた。
「最近学校どう?」
などと小声で話していると、奥の方からガサッと音がした。
(あれ……新聞紙が倒れたのかな?)
彩音さんはそう思い、特に気にしなかったそうだ。
ガサッ…… ガサッ……
奇妙なことに、音は何度か続いて聴こえた。
(おかしい……)
「ねぇ、変な音しない?」
彩音さんが声を掛けると、由希さんも頷いた。
「ちょっと電気つけてみよう。そのまま電気つけるとばれちゃうから……」
由希さんが立ち上がって、壁につけてあった懐中電灯を手に取った。
電気をつけて確認したが、奥に積まれている新聞紙は1つも倒れていなかったという。
(気のせいなのかな……)
由希さんが部屋の中を照らすが、他にも何一つ変わったことはなかった。
「ちょっと怖いよね……」
彩音さんが怖くなって出ようとしてドアを少しだけ開けると、
「彩音~?どこー?」
と、由希さんの弟の声が聞こえ、咄嗟にまた部屋の中に引っ込んだ。
怖いと思う気持ちはあれど、その時はまだ見つかりたくないという気持ちの方が
上回っていたそうだ。
「彩音、どうする……?」
小声で由希さんが尋ね、彩音さんは悩んだものの、
「やっぱりまだ見つかりたくないよ」
と答えた。するとその瞬間、
ズル……ズル……
という音が聞こえてきたのだ。
「えっ」
思わず声が漏れる。
彩音さんが由希さんの方を見ると、由希さんも聞こえていたようだった。
由希さんが急いで懐中電灯をつける。
するとライトで照らした先に真っ白い裸足が見えた。
ふくらはぎの真ん中ぐらいまで見えているが、明らかに人のものではないと分かる。
「やあああああああああ!」
二人が転がるようにして部屋から出ると、弟二人が驚いたように駆け寄ってきた。
「どうした!?」
二人は必死に由希さんの弟たちにしがみついた。
「一緒に居て!!」
そして、急いで親戚が集まっているリビングに戻ったそうだ。
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それ以来その家でかくれんぼをすることはなくなり、今でも二人はその物置に入ることが
恐ろしいのだという。
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