ふたなり(半陰陽)と日本の関係

ふたなり(半陰陽)と日本の関係

こんにちは春画―ルです。

わたしは普段、春画や江戸期の性文化について独学で学び発信しています。

 

今回は「ふたなり」

いわゆる半陰陽と日本で根付いていた陰陽の考えについて辿っていきます。

「このような時代が存在し、それは現代と分断された単なる過去で終わる出来事ではない」

ことを考えながら書きました。

 

 

陰陽とはそもそも何か

 

渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫》

 

男女を「陽」「陰」とする考えは中国古代人の世界観のひとつ

「五行説」から出たものであるという。

男性を「陽」とし女性を「陰」とし、「陽物」と言われればそれは「男根」を意味する。

 

簡単に説明すると、五行説は「互いに影響を与えあい、その正滅盛衰により天地万物が変化し、

循環する」という考えが基盤となっている。

 

この陰陽の考えは日本にも影響を与えている。

渓斎英泉の《閨中紀聞/枕文庫》の「陰陽和合の弁」を現代訳すると以下のようになる。

 

天地陰陽が交わることにより萬物を生み、男女陰陽の交わりにより子孫を生ずる。

宇宙に存在するあらゆるものの育成が整うのは交合のためである。

およそ人道とは男女和合の道を言うのみ。

夫婦和楽の交合が一日でも無くなれば子孫は絶えてしまう。

 

江戸・明治期の世相風俗の研究家であった宮武外骨氏の明治44年発行の「猥褻風俗史」では

男女の生殖器を疑似した神体とし崇拝する文化について書かれている。

 

その内容は、

「我が国の人は陰陽は萬物のはじまりであるという考えのもとに一切を陰陽の男女に分かち、

土地山海も配偶ありとした。」

というものである。

 

例えば伊予は「愛媛」と称し、讃岐は「飯依彦(いいよりひこ)」と称し一対としたという。

 

 

それじゃあ半陰陽(ふたなり)はどんな立ち位置だったの?

 

渓斎英泉《閨中紀聞/枕文庫》

 

みなさんが少し陰陽について理解を深めたところで半陰陽について話を進めるのだが、

この半陰陽は男性のすべてを具有し、女性のすべてを具有するため見解のひとつとして、

“完全なる人間”と見る見解が存在したようだ。

これはプラトンの「恋愛論」やヒンズー教のタントラ密教にも見られる思想であるという。

日本の古典神話では、イザナミとイザナギの二体が合体することにより国を生み出した。

 

そしてもうひとつの半陰陽の見解では、両性の生殖器を持つことを

”病”であるとする考えが存在する。

平安朝時代には、両性を持つことの不思議さから、それを病であると記録した

『書言字考節用集』という書物が存在する。

 

吉田半兵衛《好色訓蒙図彙(こうしょくきんもうずい)》

 

笹間良彦氏の「好色艶語辞典」では、実際に江戸期の公文書の江戸町奉行所書留中に

七歳の娘の陰門が痛み、次第に腫れて陰嚢や陰茎ができ、医師にも診断してもらったが

「変生男子」に間違いないという内容が記されている。

 

公文書のためこの内容は事実であり、このように実際に陰から陽に変化した事例もあるようだ。

 

 

明治期の性の考え方

 

笹間良彦氏「好色艶語辞典」でこのような明治期の新聞紙の記事が引用されていた。

明治九年八月七日付のある新聞紙の記事である。

 

半陰陽 女で男の風をするものもあり、男で女の風をするものもありますが、

何れも御法度なれど、下谷通り新町魚屋万蔵の悴清吉年は十七でまだ前髪もあり、

小さい頃から女だ女だといっている位ゆへ、近所娘達もお清さんと云ひ、

平常羽根手まり御手玉などをして女と一所に遊び男と一緒にならないから、

男女(東京ではカゲマをさして云)ナニあれは女だが男作りしている(以下省略)

 

男性でもかかわらず女性の身なりをしたり、女性が好む遊びを好んで行った悴清吉年のことを

「半陰陽」と例えている。

 

田中裕氏の「明治期の新聞言説における鶏姦罪」(早稲田大学大学院教育学研究科紀要)によると、

明治期の新聞紙は性についての言説を複数形の秩序を形成し、文明開化という啓蒙思想に

共感を示しているものの、時代を超えて営まれた性のありかたが反映されているという。

 

最初の新聞紙で紹介した男性であり女性の身なりを好むことについて、

あのような書き方をした経緯については他の似た記事についても調査し、

当時の思想とともに考察する必要があると感じた。

 

現在はわたしで集めた資料が少ないため、

一概に性の多様性について当時の意見がどうだったかは断定しません。

 

今回は江戸期の半陰陽について調べるつもりだったのだが、明治期の記事まで発見し、

少しであるが日本の表面には出てこない性について紹介しました。

これらの日本の性文化について記録してくれた研究者の方々に心から感謝します。

 

 


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カンレン

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