居酒屋の怖い話

居酒屋の怖い話

これは現在二十代の男性、森田さんの体験談である。

 

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森田さんは学生だった六年前、練馬区に住んでWという居酒屋でアルバイトをしていた。

Wは大阪風の居酒屋で、メインメニューは焼き鳥や串カツだった。

店内には昭和の歌謡曲が流れ、壁には時代を感じられるポスターが貼ってある。

キャベツがお通しで出てくるので、串カツにタレを二度付けするときにはそれを使うそうだ。

そして駄菓子が食べ放題だったという。

 

当時、営業は17時からで、森田さんは15時頃から食材の仕込みを任されていた。

16時を過ぎるともう少し従業員が増えるが、15時台は比較的ゆっくりとしている。

 

その日森田さんは当時二十代後半の女性、金子さんと共に15時からのシフトに入っていた。

森田さんがカウンター内に入り、フライヤーの部分にアルミの蓋を被せてまな板を置き、

そこで野菜を切る。

金子さんは入ったばかりでまだ出来ることも少なかったため、

駄菓子を並べてもらうことにしていた。

 

「並べ方も特に決まってないので、好きに並べてください」

「分かりました」

 

カウンターに入っていた森田さんは野菜を切りながら自然と、

壁に向かってしゃがんで駄菓子を並べている金子さんの背中が見えている形になった。

 

すると突然、金子さんが「ひ」と短く声にならない声をあげ、

そのまま後ろにひっくり返ったのだ。

 

コケただけではなく、びっくりしたように見えた。

 

「どうしたんですか?」

 

声をかけたが、金子さんは声をあげないで固まっている。

 

(ん……?)

 

森田さんは厨房を出て金子さんの方に近寄り、声をかける。

 

「どうしたんですか、大丈夫ですか」

 

「見たんです」

 

(あ、ネズミかな?)

 

当時、ネズミがお店に出た出ないの話があり、森田さんは咄嗟にそのことかなと思った。

ただ、ネズミは厨房の下水の流れる配管にいたとしか聞いていない。

 

(こっちもいるのか……)

 

「ネズミ、逃げちゃいました?」

 

「いや……ちが、違います。

……チェックのシャツを着たおじさんが、そこに……いたんです」

 

金子さんは震えながらそう口にした。

森田さんは周りを見渡すが、ほかに誰の姿もなかった。

 

「いないですよ」

 

「いやいたんです」

 

金子さんは震えたままで、仕事になりそうもない。

 

「……とりあえずオープンまで時間があるし、厨房の奥で休憩していいですよ」

 

「一人でいたくない……」

 

「じゃカウンターの方に座っていますか?」

 

金子さんは森田さんと向かい合わせになるカウンター席の端に座った。

しばらくして見ると、震えは止まったようだ。

 

「大丈夫そうですか」

 

「……大丈夫じゃないです」

 

「じゃあ、俺から店長に言っておくので、今日は帰っていいですよ」

 

「すみません……」

 

厨房の左側が休憩室となっているのでそこで着替えて帰って良いと伝えたのだが、

着替えるのも一人になりたくないという。

流石に女性の着替える空間に一緒にいるのも落ち着かないが仕方がない。

 

「分かりました、……それじゃあ、俺はそっち見ないので、そこで着替えてください」

 

「はい……」

 

着替えの終わった金子さんは「入口までついてきてもらっていいですか」と言い、

森田さんは店の入り口まで送ったそうだ。

 

その後、金子さんは制服も返さずにアルバイトを辞めてしまったため、店長がぼやいていたという。

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「俺は全然そんな人見なかったんですけどね……。

金子さんはあれから電話も繋がらなくて、それも含めて、ちょっと怖い思い出です」

 

森田さんはそう話してくれた。

 

 

ここまでお読みいただきましてありがとうございました。

取材時に森田さんが描いてくれた絵が可愛かったので、あわせてご覧ください。

(★印=チェックのシャツの男がいたらしき場所/♂記号=森田さん/♀記号=金子さん)

 

 

 

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(何年前・どこで・こんなことがあった、など)

 

志月かなででした。

 

 


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