友人にまつわる不思議な話3

友人にまつわる不思議な話3

※こちらは『友人にまつわる不思議な話2』の続きです。

 

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緑の手の出来事から、さらに数日経ったある日のことだ。

吉本さんは佐伯君の話をしに中学校に行く機会が多くなっており、その日は友人や後藤先生と共に、

職員室で会話をしていた。

 

するとそこに、吉本さんの卒業後に着任された、まだ若い阿部先生が入って来てこう言った。

「新しく原付を買ったんだよ。お前ら、乗ってみるか?」

吉本さんは、その場にいた友人や後藤先生と一緒に、ちょっと乗せてもらおうと校庭に向かった。

 

十一月の夕方で、吉本さんは上はセーター、下は高校の学ランのズボンを履き、

リュックサックを背負って階段を下りていく。

その最中、また、左肩が痛んだ。

 

(まただ……なんだろう)

 

阿部先生の原付が停めてあったのは、陸上部がアップをするときなどに使っている、

20メートルほどの中庭(ちゅうてい)と呼んでいる場所だった。

エンジンをかけた50ccのスクーターの横に阿部先生が立っている。

「じゃあ吉本からな」

阿部先生がそう促した。

 

高校生の吉本さんは免許を持っておらず、アクセルのかけ方を知らなかった。

そのため、吉本さんが原付に跨ろうと右ハンドルを強く握った瞬間、

原付がいきなり走りだしてしまったのだ。

 

(ヤバい!!)

 

吉本さんはどうやって止めたらいいのかも分からず、公道に出てしまった。

原付は数メートル走って横向きに倒れ、吉本さんはポーンと宙に投げ出されてしまったのだ。

 

(あ……)

 

そして、不思議なことに、冬の夜空に佐伯君の顔が浮かんで見えたという。

笑っているのが印象的だった。

 

(佐伯……?)

 

あまり表情のある子じゃないから、普段とあまりかわらない。

が、友人である吉本さんには、佐伯さんが確かに笑っているように感じられたという。

 

(あ、……佐伯が、俺を迎えに来たのかな)

 

下はコンクリートだ。

どういう風にどこへ自分の身体が飛んでいるのかわからない。

吉本さんは落ちた瞬間に気絶していた。

 

「……い!……おい!!吉本!!」

 

声がして、目を開けた。すると、先生と友人が自分を囲んでいる。

何かを言う前に、こう問われた。

 

「何があったんだ!?」

 

吉本さんは眉をしかめた。

 

(いや、おかしいだろ。何があったのかはこっちが聞きたいよ)

 

すると後藤先生がこう続けた。

 

「お前、ずっと空見てたぞ。

空見て、なんか頷いて、そのあとに両手を頭の後ろに回したろ?」

 

後藤先生の話によれば、吉本さんは空中に放り出された瞬間、

まるで後頭部を守るかのようにして落下していったという。

放り出された時点で、顔面から落ちるか、後頭部から落ちるかなどわからないはずだ。

なのに吉本さんは頭の後ろに手を回していた。

そして、背中から落ちていったのだという。

 

(あ……)

 

その時吉本さんは、肩の痛みがゆっくりとおさまり、同時に何かが離れていくという感覚があった。

 

(佐伯が、助けてくれたのかなあ……)

 

吉本さんは涙が止まらなかったという。

 

 

佐伯さんが亡くなったのは今から約三十年前で、

当時はパソコンはまだ一般家庭にあまり普及していなかった。

佐伯さんは自分のパソコンを買い与えられており、亡くなった際には

「パソコンを見て」

と書置きが残されていた。

そのパソコンの中に、ワープロ打ちの遺書があったという。

 

内容はマスコミには公開されず、佐伯さんが亡くなって大分時間が経過してから、

佐伯さんのお母さんがパソコンの中にあった遺書を吉本さんに見せてくれたそうだ。

そこにはこう書いてあった。

 

「僕は誰も止まらない通過列車の駅」

 

誰にいじめられたとか、誰がいやだったとか、学校に行きたくなかったとか、

こういうことが出来なかったからということは何も書かれていなかったそうだ。

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吉本さんは今でも、鮮明に覚えていることと、ぼんやりとしか覚えていないことの境目が

あいまいだという。

それでも毎年佐伯さんのことを思い返すそうだ。

 

怪談はかならずしも恐ろしいだけではない。

わたしはこの話を聴いて、改めてそう思うのだった。

 

 

ここまでお読みいただきましてありがとうございました。

 

実話怪談があり、記事にしても良いという方は、

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その際箇条書きで構いませんので怪異体験のことを簡単に記してありますと大変助かります。

(何年前・どこで・こんなことがあった、など)

 

志月かなででした。

 

 


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