
これは佐々木さんという男性の体験談である。
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十五年ほど前、鳥取県米子市にある某大手全国チェーンのカメラ店で店長をしていた。
そこでは職業柄、不思議な写真を見ることが多かったという。
たとえばこんな写真が持ち込まれたことがあった。
「あの……こんな映り方、するものですか?」
写真を差し出して来た男性が、彼女と手を繋いで写真に映っている。
(うわっ……)
カウンターで写真を見た佐々木さんは驚いた。
手を繋いだカップルの指が、二十本あるのだ。
そのカップルは、いわゆるカップル繋ぎという、手のひらを合わせて互いの指を
絡ませる繋ぎ方をして写真に映っていた。
繋いだ手は互いの腰の間にあるのだが、その繋いだ手の下にも手前にも、
その部分のすべてが指になっていたのだ。
(ブレ……にしては鮮明過ぎて気持ち悪いな……)
写真を渡す前には気づかず、持ち込まれてから知ったそうだ。
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もし「おかしなもの」が映ってしまって、それに気が付いたとしても、
店側としてわざわざ客に伝えることはないという。
「気づいていても話しませんし……、もし聞かれても否定しますよ。
それでも気になるなら、お祓いをお勧めしていました。それで気が楽になるならと」
佐々木さんはそう話す。
こんな相談を受けたこともあった。
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一眼レフカメラで撮影された写真で、佐々木さんの勤務していた店舗で現像したフィルムだった。
「この写真は、お祓いを受けた方が良いのでしょうか……」
差し出された写真には、ベビーベッドに寝かせられた可愛い赤ちゃんが映っている。
赤ちゃんは足をこちら側にして、枕をして寝ていた。
(あれっ)
ただ、妙な違和感があった。
赤ちゃんのお腹にシルクのような光沢のある真っ黒な布がかけてあったのだ。
まるでタオルケットをかけられたかのようだった。
写真に映っている子の父親はこう話す。
「うちにはこんな布は無いし、仮にあったとしても、赤ちゃんのお腹にかけたりしていません。
不吉なので、お祓いを受けた方が良いでしょうか」
無理にでも科学的に説明するなら、プリント時にソラリゼーションという現象が
発生したかもしれないと佐々木さんは思った。
だがフィルムが透明だったことを鑑みると、やはりそこに黒い布があったとしか思えない。
写真を見せられた佐々木さんはこう答えるしかなかった。
「ネガフィルムを拝見しても白く抜けていて、反転したプリントが黒くなるので
確かに写っていますから、写真屋としてはそこにそれがあったとしか思えませんが……
お祓いを受けた方が気が楽になられるなら、そうされた方が良いかもしれませんね」
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写真の加工が当たり前になってしまった現代において、心霊写真は
その真贋が非常に見分けにくいものとなった。
しかしフィルム時代からこういった心霊写真はたしかに存在しており、
どうしてそうなってしまったのか、プロの目からも理由がつかないことは多々あったようだ。
読者の方も、自分の古いアルバムをめくってみてはいかがだろうか。
もしかしたら当時は気付かなかった心霊写真が眠っているかもしれない。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。
引き続き記事を執筆して参りますので、お手すきの際にでもお読みいただけましたら幸いです。
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(何年前・どこで・こんなことがあった、など)
志月かなででした。
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