花子さんの怖い話

花子さんの怖い話

これは、平成元年生まれの川田さんが、小学校三年生の頃の話だ。

 

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少子化が進み、川田さんが通っていた当時、学年には二クラスしかなかったという。

学校では

「あれをするとお化けが出る」

「これをしたら祟られる」

などといった噂があり、そのうちのひとつにこんな話があった。

 

夜中に

(花子さん…… 花子さん……)

と心の中で唱えると、実際に花子さんが現れるというのだ。

具体的な時間の指定があったようにも思うが、それは思い出せないという。

 

当時川田さんはクラスの真ん中で騒いでいるようなグループの、リーダー的存在だった。

ある日、友人の一人が中休みに川田さんの元にやってくると、

「なあL!聞いてくれよ」と、先ほどの花子さんの話をしたのだ。

当時怖いものが苦手だった川田さんは、大人ぶって興味のないふりをしたものの、

内心は話の内容をとても恐ろしく思っていた。

 

川田さんの両親は小学校一年生の時に離婚をしており、川田さんは二歳年上の兄と一緒に

父親に引き取られている。

小学校から徒歩一五分くらいのところにある一戸建てで、兄と父と祖母と同居していた。

また、別宅には曾祖母が住んでいて、時折泊まりに来ていたという。

 

父親は仕事で忙しくしており、いつも眠るときは兄と一緒だったが、

その日はどうしても花子さんの噂が気にかかった。

そのため、適当な理由をつけて、祖母も一緒の部屋で眠ってくれるようにお願いしたそうだ。

 

寝室にしている部屋は、六畳の和室だった。部屋に入って右側に大きなすりガラスの窓があり、

そちらに足を向けて布団を三つ並べる。川田さんは引き戸側に横になり、祖母を真ん中にし、

壁側に兄が横になって眠っていた。

 

(おばあちゃんと一緒だから大丈夫……)

 

そう思いながら眠りについた川田さんは、夜中にふっと目を覚ましてしまった。

すう、すうと二人の寝息が聞こえる。

部屋には時計がなかったので正確な時刻はわからない。

部屋は電気が消えて暗く、カーテンの掛かっていないすりガラスの窓の向こうに、

非常灯のあかりがうすぼんやりと見える。

 

そしてよせばいいのに、川田さんは眠る前に意識し続けていたせいか、心の中で

(花子さん…… 花子さん……)

と唱えてしまったという。

 

すると、それまでは静かな夜だったのにも関わらず、突然、窓の外に強い雨が降り始めた。

ごうごうと強い風が、まるで意思を持っているかのように窓を叩く。

びかりと空の向こうで何かがまばゆく光る。

そして、すりガラスの窓の向こう側に、蝙蝠くらいの大きさの鳥のようなものがバタバタと

三羽ほど飛んでいくのが見えた。

窓の外は中庭になっており、道路を挟んで隣の家まではそこそこの距離があった。

 

川田さんはこのとき、人生で初の金縛り状態にあっており、眼球しか動かすことが出来なかった。

どうしてか、妙にざわついた気持ちになる。

自分は、してはいけないことをしてしまったのではないか。

 

(も、もしかして、……本当に……花子さんが……)

 

川田さんが突然のことに慄いていると、視線の先で

 

すすす……

 

襖がゆっくりと開いていくではないか。

必死に眼球だけを動かして襖の先を見ると、三メートルほど先の廊下の奥に、

日本兵が隊列を組み、武器を持って戦争に向かう光景が見えた。

まるで赤みがかったスクリーンを見せられているようで、廊下の右から左に向かって、

ゆっくり、ゆっくりと歩いて行く。

行進をしているのであろうが、動きはスローモーションに見えた。

日本語かまではわからなかったが、わーーーーーーーーっと、

テレビの音が聴こえるような状態で、大きな声が聞こえていた。

 

兵隊が現れる側には、来客用の部屋と二階へ続く階段、そしてその奥に仏間がある。

そして兵隊が向かう先には曾祖母の部屋とトイレしかない。

その日、曾祖母は泊まっていなかった。

 

恐ろしくなった川田さんは

(花子さんごめんなさい!! 花子さんごめんなさい!!)

と、心の中で祈るように唱えた。

すると、嘘のようにぴたっと、全ての現象が収まったという。

 

川田さんには、そこから先の記憶がないそうだ。

おそらく、そのまま気を失うように寝てしまったのだろう。

気が付くと朝で、兄と祖母はすでに部屋にいなかった。

兄や祖母に話したが、どちらも真剣には取り合ってくれなかったという。

 

(いったい何だったのかな……)

 

外や廊下はまったく何事もなかったかのように普通だった。

しかし、単なる川田さんの夢じゃないことを裏付ける出来事があった。

 

あのすりガラスの向こう側に、ぺと……と小さな手形がついていたのだ。

 

窓には汚れらしい汚れもなかった。

ただ、自分たちのものとは違う、小さい手のような跡がついていたという。

窓の中央、当時130センチほどあった川田さんが背伸びをしてようやく手をつけるようなところに、

部屋の外側から片手だけくっつけたかのように、手のあとのようなものがついていた。

自分の手とお兄ちゃんの手をくっつけてみたが、それよりも一回りくらい小さい。

 

道路から家の中庭までの距離を考えると、夜中に小さな子がつけるなんてことはありえないだろう。

それに、仮にこの小さな生き物が人間だとして、この高さにはつけるのが不可能だと感じたそうだ。

 

川田さんが兵隊に気を取られて気が付かなかっただけで、

花子さんは、本当はすぐそこまで来ていたのかもしれない。

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ここまでお読みいただきましてありがとうございました。

引き続き記事を執筆して参りますので、お手すきの際にでもお読みいただけましたら幸いです。

 

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志月かなででした。

 

 


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